ENo.0143　-KMG- Killer Mart Girls

「······はぁ」
電車に揺られながら、只野仁志はため息をついた。
またバイト先の牛丼屋で怒鳴られた。
ミスをしたのは先輩なのに、言い出せなかった。
言えば、嫌がらせが更に苛烈になる。

目の前のドア窓にうつる自分は、なんて情けない顔をしてるのだろう。隣で制服姿の女子高生がクリスマスの話をしている。「つまらない人」先日、別れた恋人に言い捨てられた言葉が、今でも胸に刺さって抜けないままだ。

「はぁ···なにやってんだろ、ぼく」
駅から自室へ戻る道すがら、ふと立ち止まって夜空を見上げた。白く輝く三日月が、高いところから見下して嗤ってあるようだ。予定の空いたクリスマスに想いを馳せる。なんのために頑張ってきたんだっけ？誘うような友達もいない。実家にも帰りたくない。どん詰まりだ。真綿でのどを閉められているような閉塞感。このままきえてしまえば楽になるだろうか。

そう思い立ったときに、ふと、違和感に気がついた。
立ち止まった脇に立っている黒塗りの四角い建物。看板には『KM』のロゴ。

「······キラーマート？」

こんなところにコンビニなんてあったか？
いぶかしがりながらも、建物から漏れる明かりに誘われるように、只野仁志は、ふらふらとコンビニのドアへ足を進めていった。