ENo.0059　鍵原 ユキ

夕闇が続く国、とある茶髪の眼鏡の青年、ユキが店長をやる店。
既にごちゃごちゃしてきた店内の机で、ユキは――

「ああーっ！！」

カメラを壊していた。

経緯を説明しよう。
ここへ来た初日から備品のカメラを壊したユキは、「まあ後で直せばいいか」と思っていたが、カメラはそんなに甘いものではない。
機械いじりなど音ゲーのボタン掃除を教わったぐらいの青年が直せる代物ではないことなど、わかりきったことだった。
しかし、この世界に来てまだ間もないユキには友人がいない。この辺の地理も詳しくない。というか日に日に地形が変わっているような気がする。困る。
ましてや機械に詳しそうな人などわかりやしない。今の所持金でカメラが買えるか、というのもわからない。ないものづくしだ。
その中で唯一わかりそうなこと。自分が壊してしまったカメラ。

ユキは思ってしまったのだ。
『もしかして頑張ればなんとかなるんじゃ？』と。

それから手にしたドライバー、今この店にあって、必要そうだと思ったものをざっと。

これを見ている皆さんはもうお気づきかもしれないが、ユキはあまり頭のいい方ではない。

…━……━……━……━…

「ううー……これはもうダメっす……お手上げっすよう……」

そんなこんなで数時間の格闘の末、"壊れたカメラ"は"更に壊れたカメラ"へ進化した。
ユキはやっと理解をした。もうこうなったら自分の手じゃどうしようもないことを。
そして諦めて、今週の日誌をつけるためにボイスレコーダーへと手を伸ばしたのだった……。

…━……━……━……━…

---音声メッセージ vol.2

ううう……カメラダメだったっす……直せなかったっす……。コレ金魚さんに怒られるかなあ。
思ったけど金魚さんに言えばカメラ貰えるんじゃないっすか？オレやっぱ天才。
でも怒られるのやだなあ。ま、まあ、可能性として考えておくっすよ～。

あーなんだっけ、何言えばいいんすかね？
そうだコンビニ！コンビニ超大変だったっす！
どのくらい大変って、元いたゲーセンとは大違いっていうか、なんかこう、めっちゃ大変だったっす！
これまたやるんすよね？あの大変なのをまたやるんすよね。大丈夫かなあオレ保つかなあ。
まあオレならやれるっすよね。というかやらなきゃ帰れないし、オレ丈夫だしだいじょーぶ！
そういや日用品がなんとなーくマイクロスイッチに見えたから、マイクロスイッチって名前つけたんすよ。
そしたらもうどこをどう見てもマイクロスイッチにしか見えなくなって……ここのそういうアレなんすかね？不思議っす。

うーんとあと言うこと、言うこと……いや特にないっすね。
日記つける週間なかったからこう、馴染みがないっていうか、言うこと見つからないというか……。
お友達もいないしそういうことも書けないっす……。

あ、そうだ、前回何にも作ってなかったから何か作ってみるっすかね？
なんだか紙ばっかあるから、それっぽいやつ作ろう。流行りのキャラも入れればきっと大人気っす。えへへ。
あとは仕入れもしてみるっすよー。やっぱ色々あったほうがコンビニ！って感じっすからね！

そういやなーんか気になることがあったような？忘れちゃったっす。まあいいか、きっとそのうち思い出すっすよ～。