ENo.0014　銀竜

朗読をしよう。

ただしこの物語はハードボイルドでもロマンスでもない。

何某ボンド諜報員のようにスタイリッシュさの欠片もない。

互いは甘い濡れ場を演じる演者にもなれない。

せいぜい三文にもならない安っぽいシナリオに過ぎない。

……ここまで扱け下したものの、それでも劇的な出会いはフィクションに限らない。

女は逢魔が時に男に会った。

女は男を気まぐれで助けた。

ここには機運在って生き永らえた男がいた。

男は戦場にいて転送された兵士と口にした。

キャトラーだと思ったらドリフターだ。忍者と紹介する女は笑った。

それでもどこか嘘と思えない主張に、気立ての良い女はとりあえず肯定した。

対して忍者というなら分身でも出せと男は揶揄する。

それは流派が違うからダメと女はお道化た。

平穏な生活の中で、男は女に活力を貰った。

平凡な日常の中で、女は男に思い出を貰った。

男と女は仲睦まじく、幸せに暮らしていたとさ。

ちゃんちゃん。




――安っぽいシナリオと言ったのに。後半が適当過ぎる？
ではもうしばし頑張りましょう。
ハードボイルドにもロマンスもない、ごく普通の御話を。