ENo.0083　荒川　雨

どうしてこんなことになっているのか。

これからどうなってしまうのか。

俺には分からない。

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「雨。オレは嘘が嫌いだ」

　いつかの話だ。ダンベルを両手に持つ兄貴の言葉を聞きながら、単語帳を流し見していた。

「だろうな。嘘吐けるような顔じゃねーもん、兄貴」

「はは、まあそれもあるが。重要なのは、嘘は『非効率』だということだ」

　効率、非効率。口癖のように、その単語を兄貴は使う。

「目の前の事実を隠蔽し目を逸らせば、それだけ時間は過ぎる。身体を鍛え、知識を蓄える筈だった時間は無為に消える」

　口を動かしながら、上腕も激しく上下させる。

「さらに、嘘はさらなる嘘を呼ぶ。嘘に嘘を――あるいは真を塗り重ねど、土台が嘘なら同じ事。出来上がるのは糞の山だ」

「ん」

　短く返事をする。素っ気無く思われるかもしれないが、兄貴ならきっと分かってる。

「オレ達に嘘は必要無い。オレの力と、お前の知で」

「何とかするさ。でないと、な」

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「どうして」なんて、生まれたときから。

「どうなってしまうか」なんて、最初からずっと。

俺には分からない。



だが、今やることは、分かってる。