ENo.0027　ソル＝D＝ティー

ふと、母のことを思い出した。


どういう理屈かは分からないが、
あの竜と話していると、あの紅茶畑のことを無性に思い出してしまう。

別段、雰囲気が似ているとか、そういうこともなく、
しいて言えば年齢が近……
……こんなことを書くと母にせよ、あの竜にせよ、顰蹙を買うかな。
やめておこう。まだ死にたくない。


多分、思い出す理由は明白だ。
元々あの紅茶畑に私が行ったのは、
あの竜からのものも含めての、様々な致命傷を癒すためだったのだから。


元はといえば、私が襲い掛かった側だったのだが、
見事に返り討ちにされて、さらに致命的な多撃を貰って、
後は死ぬだけというところで、母さんがあの紅茶畑に連れて行ってくれた。

そして、あの紅茶畑は燃えて、私の中の魔神としての力は急速に失われていって、
今に、至る。


「はぁ」と私はため息を一つつく。
ホームシックか何かだろうか、正直、胸が苦しい。

―――何か、思い出せるようなものを、作ろう。きっとそれで心が落ち着く気がする。