ENo.0084　アード

まあ、アイツがここにも来ていたら。
『向こう』でもお前はそうだろうが、と言われてしまいそうだが。
好き勝手にやっている結果として、それなりの実りが今回は付いて来た。

物珍しさに駆られてばかりの毎日というのもそれだけでまったく飽きはこないものだが、
それはそれとして、やっぱり手元に多く銭こが残るのは悪い気はしない。
物珍しさで遊ぶにしても、いくらかの身銭は必要だし。
此処では商品を買って並べ、その商品が補充されるところまでが一回の支払いで網羅されているらしい。
その分と云ってはなんだが、それはそれは商品ひとつひとつは埒外に高い。
商品ひとつ。この間かったみかん酒にしても、ひとつ仕入れるのに１５本は売っていかないと赤字に転んでしまう。
まあその分買ってしまえば。元手を取ってしまえばあとはすべてが純利に転ぶすごい場所なんだが。
そういえば手間賃も考えていないもんな。
働いているのが私だけというのもあるが。他所の、沢山働き人を抱えている店舗はどうやっているのだろうか？
タダ働き？‥まさかな。
さっきマニュアル交換したところは６名の大所帯だったし。‥まさかな。うん。
あぁ、あとはひょっとすると現品払いなのかな。
一度払ってしまえばあとは売り放題。ということは商品を渡しても懐は痛まない。
‥‥気がするが、それでいいのか？
それでいいなら此処を悪用したら幾らでも帰ったあとに荒稼ぎできそうだけど。
‥やめとこう。なんかやっちゃいけない事に両足ずっぽり突っ込んでる気がする。

どの店とも競争というのが、好き勝手にやってて少しやり辛いところかな。
あんまり手を抜くと買い物するのに満足な分の銭も残らないものな。
最初は危うかったものなあ。支出と収入トントンという感じだった。
まあ、最初から資金として渡されたお金も相当量あったから、すぐにそれが細るほどではなかったが。
今回は他所のを並べようか考えたが、なんだかんだで自分の処が出したぐい吞みをもう少し並べることにした。
自分の商品が自分の棚によく合うことは自分がよく知っている。
そういう意図をもって作ったモノなら猶更だ。
問題はそろそろ酒がじわじわと少なくなってきたことだな。

となれば次に必要なものは、まあ無論。

酒が足りない。となる。