ENo.0144　ラスティ・ネイル

　ラストストアーは今日もコンビニ戦争の最中にいた……。

「あ、すみません。商品入れ間違えてしまいました。申し訳ないです」

　ラスティは犯してはならないミスを犯した。商品の入れ違え。焼酎と間違えて消臭剤を袋に入れてしまったのだ。
　ラスティは客商売が不慣れなためかこのようなミスをしょっちゅう犯していた。

「んだと！？　なんだコラァてめえ！！　なんだ！　コラァ！　てめえ！！」
「す、すみません」
「なんだぁコラァァァてめ」
「ちょいちょいちょい、３リピート目するな、３リピート目を」
「ラスティ、お困りのようね」

　困り果てたラスティの前に現れたのは、一匹の金魚。ラミアの金魚だ。
　彼女は黄金の鱗を煌めかせ、ラスティと客の仲裁に入る。

「今取り込み中ですよ！　他所行ってください、しっしっ！」
「なんだぁぁ？　ｺﾗﾃﾒｪ!!」
「あなたは壊れたラジカセですか！？」
「ふふっ、私の助けが必要のようだけど？」
「もう！　わかってるんだったら早く言ってください！！」
「今まであなたの商売を見てきたけど、まったくもって杜撰。しょうもないミスの繰り返し。今までは許してもらえたかもしれないけど、あなたもそろそろ一人前の商売人として見られる頃なのよ。それなのにあなたときたら」

　ラミアの金魚の言葉にラスティはドキリとした。
　許してもらえるという理由で甘えていたという事実。
　甘い考え故の現状に恐怖する。これからの不安。己の至らなさにラスティは震えた。

「わかりましたから解決策を言ってくださいよ、じれったいですね！！」
「これはトラブルよラスティ。トラブルには４種類あるの。光のトラブル、闇のトラブル、活気のトラブル、癒しのトラブルよ。ちなみにこれは光のトラブルね」
「光ですか！？　これが！？」
「な　ん　だ　こ　ら　ぁ　て　め　え」

　コンビニ戦争、良い客だけではない。こうして客は敵として店に襲い掛かってくるのだ。
　光には闇を、闇には光で、活気に癒しを、癒しに活気を与え、問題を解決しなければこのコンビニ戦争は生き残れない。

「ラスティ、闇の力で対抗しなさい。あなた程度でも闇の力は使えるのでしょう？」
「な、納得いきませんけどそうするしかないですね……。ええい、大地に闇を重ね栄華を挫く、永遠に腐れた土地に苦しみ、飢え、朽ちろ―――湧きあがれ瘴気よ！」

　ラスティが呪文唱えると、地面から身体を蝕む毒の瘴気が湧きあがり、客は苦痛に喘ぎ、のたうち回りながらそのまま腐れ、逃れるように金を払い店を出ていった。

「店内です。手加減しましたよ」
「えっ、あ、うん……。すごいわね……」






　戦闘ラミア集落の最長老は、何か常識もおかしかった。




　次回予告
　ラスティは死んでしまった。
　空から降り注ぐ大量の店舗に潰されてしまい、回復の見込みもない。
　この危機にラミアの金魚は、とある人物を頼ろうとする。
　次回、夕闇国のコンビニ戦争～ザ・ラストラミアラストデイ～
　『ラスティ、死す』
　彼女は夕闇国で生き残れるだろうか。