ENo.0038　ジルヴィア=アーベントロート

「仕える身であるわたくしめが過ぎたことをお伺いしますが……ジルヴィア様はなぜこの地へ？」

「人形が人間様に尋ねごとたぁ感心しねぇな！　んなもん分かるだろ普通に考えりゃな！！」

「いいえ、分かりません」

「んなもんいろいろマズくなったからに決まってんだろ！！　しばらく異国に尻尾巻いてとんずらするレベルにはな！！」

「……なるほど、また　というわけですか。　それでこの度はどのような大事を？」

「ああ、いっとくがぁてめぇらンときと一緒にすんじゃねぇ！　あんなこたぁあれ一度っきりだ、二度はねぇ！」

「ヤクやらオペやらそこらでマズったに決まってんだろ……　犬に嗅ぎ付けられたぁ終いだ」

「何故そこまで危険な綱をわたるのでしょうか。　わたくしにはとても理解が及びませんわ……」

「そりゃあヤブ共も口をそろえて言うだろぉよ。　ただ私は私のやり方でやる。　患者は治るんだ、正しいもクソもねぇ！」

「果たしてそれでよいのでしょうか？　正しい正しくない以前に、です」

「てめぇ、随分と言うようになったな?」

「申し訳ありません……つい出過ぎた真似を」

「いんや嫌いじゃねぇよ。　前のてめぇら木偶人形のサマからすりゃあ大進歩だ。　褒めてやる」

「わたくしめはあと一月ほどで国へ帰ります……ジルヴィア様は何時お戻りに？」

「さぁな？　ここにお呼びじゃなくなりゃまた他所にずらがるさ」

「となると……この業務が終われば当分会い見えることもないのでしょうね」

「なんだ？　借金ぽかそうとでも思ってンのか？」

「いいえ、しっかりと貯金をしておきますわ」