ENo.0100　B・ミナスジェライス兄妹

業務日誌
1日目
記入：臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
シトリン・マーケット配属１日目。慌ただしく引き継ぎと業務内容の説明を受ける。
説明と言っても、店舗バックヤードに置かれていた書類の束に目を通しただけだ。前任者らしい人間の姿はどこにもなく、配送業者達は粛々と店頭陳列用の商品を届け続け、配属されて早々におれ達は荷物整理に追われた。
業務の合間に外出してみて気がついたが、ここはあの霧深い残像領域ではない。霧の代わりに街を埋めるのは夕闇で、ここはどこにいてもぼんやりと明るい一方で仄暗く、何もかもがはっきりしないのだ。世界の境目すらそんな有様らしいから、おれ達兄妹が配属されたこのコンビニにしたって、本当に実在しているのかどうか（コンビニという事業形態自体も、おれは夕闇国に来て初めて知った）。
ともあれ、まあ、死ぬような仕事でないことは確かなようだ。今まで受けてきた仕事に比べたら、ずっと気楽だろうと思う。妹達に危害が及ばないのは何よりだ。どういう訳かおれ達の電源コードと適合するコンセントも設置されているし（だからこそ胡散臭いのだが）とりあえず、やれるだけやってみるしかないだろう。

（業務日誌は整った字で綴られている）
（もしかしたら、このページには翌日の夜、ひどく乱れた字で下記のように書き足されるかもしれない）

きらくとか　かいたの　だれだ
おれか