ENo.0048　ハンナ・ザッカーカンデル

神父「お前、実は楽しんでるだろ」
ハンナ「楽しんでるわけないじゃないですか。いやいやですよ、こんなの。」

ハンナは、そう吐き捨てるとまた手元の袋に手を伸ばした。
袋の中に、様々なお菓子を詰めていく。甘いものから、少しほろ苦いチョコレートも。
《教会》が一年の中でもひときわ大事にする祝福の日。救世主の降誕を記念する祭日である。
『魔女』を殺した『英雄』の降誕日。
その『英雄』は様々な逸話で、もみの木と一緒に様々な人によって飾り付けられた。
その真贋は、今ではもうわからなくなってしまったけれど。

神父「いやいやならやめればいいじゃないか。君の仕事はそんなことじゃないんだろう？」
ハンナ「それでも、あたしたちは《教会》の所属であることには変わりありません。」
ハンナ「それならば、主の降誕を祝うのは当然の義務であり、その権利もありますから。」
神父「そんなホントかウソかもわからない話を信じられてもなあ。ミサにだって、誰もこないのに」
ハンナ「それはあんたの責任でしょ！？　降誕祭なのに、何も贈り物を用意しないなんてありえませんから！」

神父は、ごろんと椅子に寝転んだ。やる気が出ない、めんどくさい、と表情が雄弁に語っていた。
ハンナは溜息をついて、「とっとと《教会》を出てってくださいよ」とだけ小さく呟いた。
詰められたお菓子の袋を、細長いリボンで結んでいく。
リボンで結び終えたら、《教会》のシンボルであるヒイラギの装飾を施してまた次に手を伸ばす。

神父「でも君、やってること、世間一般ではクリスマス商戦――」
ハンナ「やかましい」

綺麗に整ったお菓子の袋と、神父が途中で集中力が切れたのであろう残骸。
ハンナは黙々と作業を進める。実際問題、何一つ神父が言っていることは間違いがない。
偶然にも、ハンナと夕闇国のお客様の祝う大きな祭日は見事同日であった。
……という経緯で、ハンナはこれだと勢いよく握りこぶしを作り、包装材を取り寄せた。
結果生まれたのが、このお菓子詰め合わせの降誕祭セットである。

ハンナ「いいんです。いいんですよ、これで。」
ハンナ「コンビニエンスストアですもの。一番売ったヤツが正義、なんです。」