第6週目 『無名』’’有想霧像’’の一週間
◆日記
「ふう……」
お客さん達の波が過ぎた頃に、ようやく少し休憩がとれる。いつもはこんなにたくさんの人が来るようなことはないから、すっかり疲れてしまった。あっと言う間に夕暮れになってしまったから、もう営業時間もあと少しなのが救いだけれど。
でも、いつも見ない人が来るというのはそれだけで新鮮だ。見知った間柄、見慣れた顔。そんな人達ばかりの村の中にある、そんな顔触れの集まる店。それがこのお店だからだ。
もしかしたら、こんなことは私が働き始めてから初めてかもしれない。
(……あれ?)
そういえば、私は何年このお店で働いているんだっけ。
ずっと小さい頃に店長ご夫妻に引き取られて、お店を手伝うのが当たり前で。自分の年と同じくらいのはず。だから数えられないわけもない。のに。
(あとで店長に聞いてみないとなあ)
きっと、ちょっと笑いながら答えてくれるだろう。
物心着いた頃からなんだか忘れっぽくてうっかりしていて、変なことやもう一回言ったはずのことばっかり聞いてきた。らしい。
そんな私でも見捨てないでちゃんとお店に置いてくれる。店長がやさしい人で本当によかった。
お嬢様と山までピクニックに行くらしくて、準備のためにワインや持ち運びのランチセットを買っていったメイドさん。もし時間があれば、お仕事の話とかを少し聞いてみたかった。
ちょっと怖かったけど、意外と親切だったお兄さん。月がどうこうと言っていたから、きっと山まで星や月を見に行くんだろう。人を見かけで判断しちゃいけない。
来てくれたお客さんたちを思い返しながら、それでも誰だったのか分からない人が、一人いた。
絹糸みたいな銀の髪、日に当たったことのないような真っ白な肌。立ち振る舞いだけで何となく品の良い人と分かる彼女は、きっとどこかのお嬢様なのだろう。けれども、自分からピクニックに行きそうなタイプにはあまり見えなかった。
こちらを何か意味ありげに見てくれた。その姿を見た瞬間に、何か怖気のような、彼女にあまりにそぐわないものを感じたような気がした。その感覚も、その姿も、どこかで見たような気がする。けれどもそれが、どこなのか思い出せないのだ。
(やっぱり疲れてるのかな)
こんなに忙しい日だ。ちょっと頭の方も働きが鈍くなっているのかもしれない。
今日は早めに寝ることにしよう。丁度、部屋のランプの油も少なくなってきていたことだし。
そんなことを考えていたら、店先のドアベルが鳴った、
「はーい、いらっしゃいま――」
言葉は続かないまま、思わずあんぐり口を開けて絶句してしまった。
そこにいたのは一匹の、ゴリラだったからだ。
「……えっ、ええと、本物?」
ゴリラなんて絵本でしか見たことがない。正直目の前にいるこの大きくて強そうなサルが本当にゴリラという名前だったかどうかも怪しい。そんな生き物がどうしてこんな店先にいるのだろう。どこかのサーカス団とかから逃げ出してしまったんだろうか。
そう考えている間にも、ゴリラらしい生き物はウホウホと鳴きながら店へ入ってきている。しかも次々と。
「ああっ、待って、品物に触っちゃダメ! て、店長ー!! 助けてくださーい!! お客…様? ……お客様がー!!」
ほとんど悲鳴のような声を上げても店の奥から反応はない。こんな時にいないなんて泣きたくなる。
ゴリラって何を食べるんだっけ。食べ物をあげたら出て行ってくれるだろうか。でもここにあるのは売り物ばかりだし、勝手にあげるわけにも――
「……えっ」
何度目かになるそんな呟きと、また絶句。
服を引っ張られて見てみれば、ゴリラは礼儀正しく品物と、そしてお金を差し出している。正真正銘私達が使うのと変わらない、人間のお金だ。
事態を飲み込みきれずに時間をもらおうと視線を上げてみれば、ゴリラの後ろには品物を持った別のゴリラたちが列を作っている。その光景も、やっぱり人間が買い物するのと何も変わらない。それをやっているのが、ゴリラだということを気にしなければ。
思わず天を仰ぐ。何が起こっているんだろう。山には大雪が降るし、見たことのないお客さんはたくさん来るし、挙げ句の果てにはゴリラが普通に買い物をしている。なんだろう、夢なのかな。
見慣れた天井だけが、いつもと何も変わらない。
「これって、おかしいよね……」
ああ、目眩がしてきた。
見慣れたお店の中が、ゆっくり、歪んで、ひび割れていく。
お客さん達の波が過ぎた頃に、ようやく少し休憩がとれる。いつもはこんなにたくさんの人が来るようなことはないから、すっかり疲れてしまった。あっと言う間に夕暮れになってしまったから、もう営業時間もあと少しなのが救いだけれど。
でも、いつも見ない人が来るというのはそれだけで新鮮だ。見知った間柄、見慣れた顔。そんな人達ばかりの村の中にある、そんな顔触れの集まる店。それがこのお店だからだ。
もしかしたら、こんなことは私が働き始めてから初めてかもしれない。
(……あれ?)
そういえば、私は何年このお店で働いているんだっけ。
ずっと小さい頃に店長ご夫妻に引き取られて、お店を手伝うのが当たり前で。自分の年と同じくらいのはず。だから数えられないわけもない。のに。
(あとで店長に聞いてみないとなあ)
きっと、ちょっと笑いながら答えてくれるだろう。
物心着いた頃からなんだか忘れっぽくてうっかりしていて、変なことやもう一回言ったはずのことばっかり聞いてきた。らしい。
そんな私でも見捨てないでちゃんとお店に置いてくれる。店長がやさしい人で本当によかった。
お嬢様と山までピクニックに行くらしくて、準備のためにワインや持ち運びのランチセットを買っていったメイドさん。もし時間があれば、お仕事の話とかを少し聞いてみたかった。
ちょっと怖かったけど、意外と親切だったお兄さん。月がどうこうと言っていたから、きっと山まで星や月を見に行くんだろう。人を見かけで判断しちゃいけない。
来てくれたお客さんたちを思い返しながら、それでも誰だったのか分からない人が、一人いた。
絹糸みたいな銀の髪、日に当たったことのないような真っ白な肌。立ち振る舞いだけで何となく品の良い人と分かる彼女は、きっとどこかのお嬢様なのだろう。けれども、自分からピクニックに行きそうなタイプにはあまり見えなかった。
こちらを何か意味ありげに見てくれた。その姿を見た瞬間に、何か怖気のような、彼女にあまりにそぐわないものを感じたような気がした。その感覚も、その姿も、どこかで見たような気がする。けれどもそれが、どこなのか思い出せないのだ。
(やっぱり疲れてるのかな)
こんなに忙しい日だ。ちょっと頭の方も働きが鈍くなっているのかもしれない。
今日は早めに寝ることにしよう。丁度、部屋のランプの油も少なくなってきていたことだし。
そんなことを考えていたら、店先のドアベルが鳴った、
「はーい、いらっしゃいま――」
言葉は続かないまま、思わずあんぐり口を開けて絶句してしまった。
そこにいたのは一匹の、ゴリラだったからだ。
「……えっ、ええと、本物?」
ゴリラなんて絵本でしか見たことがない。正直目の前にいるこの大きくて強そうなサルが本当にゴリラという名前だったかどうかも怪しい。そんな生き物がどうしてこんな店先にいるのだろう。どこかのサーカス団とかから逃げ出してしまったんだろうか。
そう考えている間にも、ゴリラらしい生き物はウホウホと鳴きながら店へ入ってきている。しかも次々と。
「ああっ、待って、品物に触っちゃダメ! て、店長ー!! 助けてくださーい!! お客…様? ……お客様がー!!」
ほとんど悲鳴のような声を上げても店の奥から反応はない。こんな時にいないなんて泣きたくなる。
ゴリラって何を食べるんだっけ。食べ物をあげたら出て行ってくれるだろうか。でもここにあるのは売り物ばかりだし、勝手にあげるわけにも――
「……えっ」
何度目かになるそんな呟きと、また絶句。
服を引っ張られて見てみれば、ゴリラは礼儀正しく品物と、そしてお金を差し出している。正真正銘私達が使うのと変わらない、人間のお金だ。
事態を飲み込みきれずに時間をもらおうと視線を上げてみれば、ゴリラの後ろには品物を持った別のゴリラたちが列を作っている。その光景も、やっぱり人間が買い物するのと何も変わらない。それをやっているのが、ゴリラだということを気にしなければ。
思わず天を仰ぐ。何が起こっているんだろう。山には大雪が降るし、見たことのないお客さんはたくさん来るし、挙げ句の果てにはゴリラが普通に買い物をしている。なんだろう、夢なのかな。
見慣れた天井だけが、いつもと何も変わらない。
「これって、おかしいよね……」
ああ、目眩がしてきた。
見慣れたお店の中が、ゆっくり、歪んで、ひび割れていく。
STORY
ゴリラ様のご来店により、陳列がめちゃくちゃになってしまったコンビニこれは一体どういうことなのか……ゴリラウェーブの正体とは……
「さなえ、どうやら敵はあなたを完全に叩きのめしたい様子」
「……」
さなえは黙ったまま、乱れた商品を並べなおしていた。視察先全てがこのような有様だった
金魚の魔女は静かに空中を泳いでいる
「さなえ、ちょっとは落ち込んだ?」
「……そうだね。思うようにはいかないね」
「どうする? 手助けを――」
「手助け?」
さなえの瞳に、金魚が翻る!
「ここからが面白いところじゃない! 這い上がるのってね……楽しいんだよ」
――這い上がるのってね、楽しいんだよ――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が22上昇した
笑顔の訓練をしました笑顔が24上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
無名は眠らなくても疲れない薬を破棄した!
無名は特製サンドイッチを破棄した!
無名はクロワッサンを破棄した!
◆購入
無名は水郷の水酒を552闇円で購入した!
無名は鸚鵡印の発泡酒を607闇円で購入した!
無名は鸚鵡印の発泡酒を607闇円で購入した!
◆作製
もてなしの欠片とセールのチラシ36を素材にしていつもの看板商品を作製した!
◆コンビニタイプ決定
ホワイト に決定!!
◆アセンブル
スロット1に焼きたてふんわりバターロールパンを装備した
スロット2に水郷の水酒を装備した
スロット3にぐい呑みセットを装備した
スロット4に鸚鵡印の発泡酒を装備した
スロット5に鸚鵡印の発泡酒を装備した
スロット6に我が蒼薔薇と人生を装備した
スロット7に泡沫商材を装備した
スロット8にいつもの看板商品を装備した
スロット9にいつかの祝杯を装備した
スロット10におもちゃのナイフを装備した
スロット11に店長おすすめのロウソクを装備した
スロット12に小さな一筆を装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 2575
貢献収入 250
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 19%
合計闇円収入3529
商品販売数 2個
◆経験値が37増加しました……
◆体力が119増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献収入 250
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 19%
合計闇円収入3529
商品販売数 2個
◆経験値が37増加しました……
◆体力が119増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
無名は入店チャイム40を入手した!
無名は時代の風40を入手した!
無名は有給40を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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とある辺境の村にある、たった一軒の雑貨屋の看板娘。まとめもしない長い黒髪がトレードマーク。 ある日ある時の夕暮れ、黄昏時を通じて店ごと「夕闇国」に迷い込んだ。 心より己をそう信じて生きる、人の形をした人でないもの。 無名のまま死んだ魂たちを、意識もせぬうちに統べる少女。 何かに名を残すほどの害意も熱意も持つことのできない、無名を宿命づけられたまま生きる存在。 爛漫あるいは天然と呼ぶべき少女と、彼女にまったく認識されないままその側にいる無数の影たち――群像と名乗る存在で構成される群体である。 ―――― プロフ絵、IC0~6番:ゆゆづき様「キャラクターメーカー」で作成しております IC8~13番、23番:十con様ご提供のアイコンを使用しております | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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