ENo.0096　はいの

　
3週目、やたらと優しげなおっさんが店にくる。そこそこ売れる。
鍋がこない。あいつ逃げたんじゃねーだろーな。

それはさておき、ロールケーキはまずまずの売れ行きみてえで。
クリスマスとかいうイベントが近いからかも知れねーが、そもそも、
此処にクリスマスとかあるワケ？毎日が夕闇で雰囲気だけならアリだが。
オリハルコンとかゲームでしか聞いた事のない鉱石？もあるっぽいし、
ますますこの世界が何だか解らんくなる。…やっぱ、夢だろ。これ。

ただ、マーケットに並んでる妙ちくりんなモンを眺めるのは、意外と楽しい。
――“楽しい”って感情も、ここ暫くは感じたことが無かった気がする。
あーまあアイツの女装的な恰好も十分（見てる分には）楽しいか。見てるだけなら。

接客は相変わらずクソやる気ねェし、勝手に買って金置いてけって感じだが、
暇つぶしとしては十分な時間だ。後はこの世界で、夕闇ばかりの国で、
俺の探しモンが見付かりゃ文句はねえよ。まず、無いと。知ってはいても。


俺の角。いとしの角。今はこのロールケーキが、しょーもねーが代わりだ。