ENo.0149　唐木高

「やっぱり売れなかったじゃないか！！」

人のいなくなった店内に、怒声とも悲鳴とも付き難い声が響き渡る。
店内には大量の「おせちもどき」が残されていた。

「どうするんだこの処理は……！
お前の目的は、特別ボーナスを得ることなんだろう？」
「こんな売上じゃあ、それは難しいんじゃないか……！？」

話す男、イエスマンの声は上ずり、焦りが面に出ていた。
しかし問題の当人、木高は余裕綽々の表情を浮かべ、こう応える。

「ああ、アレは失敗だった。」
「だが、今度のには自信があってなあ？」

木高の手の上に乗せられていたのは、小さな魚のような格好をした人形であった。

「なんだそれは？」

イエスマンは訝しげに聞く。

「今流行っている(らしい)ナマズくんってやつ(のパチもん)だあ」
「こいつを店内のあちこちに設置して、他のものとセットで売るって寸法よお」

木高は声を高らかに宣言し、笑みを浮かべた。

「……」

それに対する返事は、なかった。