第7週目 B・ミナスジェライス兄妹の一週間
◆日記
業務日誌
6日目
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
ゴリラウェーブは嵐のように訪れて、そして去っていった。おれ達の予想に反してゴリラはきっちりと料金を払い、めいめいその手に品物を抱えて帰った。彼らは一体どこに帰ってゆくのだろう。順当に考えるならジャングルの奥地なのだろうが、果たしてコンビニで売られている商品がそんな場所で役立つのだろうか。それともあのゴリラ達は自分達なりの文明を持っていて、夕闇国と繋がっているどこかの世界に、ゴリラしか住んでいない都市などがあるのだろうか。考えていたら頭が痛くなってきたので、この辺でやめておくことにする。
大変だったのは閉店後だった。いくらゴリラ達が野生生物としてのそれに比べて礼儀正しかったとはいえ、あの巨体が大勢で店に押しかけたのだ。陳列棚はめちゃくちゃで、床一面に商品が散乱していた。天井から吊り下げた人工シトリンもあちこちでワイヤーからちぎれて転がっていた。このままの状態で明日の開店を迎えるわけにはいかない。おれ達三人と、自動人形を総動員して店の復旧作業にかかった(ゴリラに踏まれて駄目になってしまった食品類を廃棄するのは悲しかった)。妹達に時折休憩を取らせつつ、どうにか片付けが終わった頃には日付が変わっていた。明日も何とか開店できそうだ。
業務日誌6日目、補足。
妹達を寝かせ、自動人形に留守番を任せたあと、おれは一人で外出した。おれが残像領域から持ち込んだデジタル時計は夜中の三時を指しているが、ここはいつでも夕暮れ時の夕闇国。頭上は菫色にたそがれていた。路地から路地へ、暮れる街をおれは歩き続けた。
ここでは街と道と路地の境界はいつも揺らぎ、不定期にその構造を変える。おれ達三人には通った場所を電脳内で自動的にマッピングする機能があるが、この世界はあまりにでたらめなのでまるで役に立たない。店にいる妹達の信号をトレースすれば帰ることはできるので、あまり困ってはいないが。
ただ、この機能が今まで役に立ったことはあるだろうか。思わず笑ってしまう(思い出し笑いがおれにもできるようになっていたことに気がついた。嬉しい)。おれがいた残像領域はいつも分厚い霧に覆われて、ひどい時には側にいるはずの僚機の確認もおぼつかないほどだった。そんな有様だからおれ達の目視だけでは心許なくて、ウォーハイドラ『バーントイエロー』のセンサーも使ってマッピングした。そういって得た地形のデータすら、戦火の中ではミサイルや速射砲の直撃によって、変動し、次の出撃では役に立たないということがざらだった。
けれど、おれはそれに馴染んでしまっている。分からないこと、あらゆるものを覆う霧の中で手を伸ばし、見えもしない空を見上げること、存在しないかもしれない声に耳をすませること、そういったことにおれは慣れ親しんでいる。何もかもが日の元にはっきりと、その白黒を晒される世界があるとしたら、きっとおれはそれに耐えられないだろう。おかしな話だ。おれの体のほとんどは機械で、おれの生身の部分も0と1の羅列で支配されているというのに。
その点では、そう、この夕闇国の曖昧さは心地よかった。
そしてこうも思うのだ、もしかしたら、と。
ある路地を抜けると、開けた場所に出た。それは高台で、暮れなずみ、位置が徐々に移ろう街並みを見下ろせた。立ち並ぶ建物はどれも、くすんだ紅と橙に染まっている。
立ち止まったおれの背後に、気配がした。
(予想通り、だったな)
目を伏せる。まぶたの裏にはおれの体をモニタリングした無数の数値が映っている。わずかに心拍数が上がっているのが確認できた。緊張している。
おれは昨日、ヴェラとアニカにも片付けの合間を縫って、一人きりで外出をさせていた。そして彼女達は、揃って外出先で同じ現象に遭遇した。それでほぼ確信はしていたのだ。おれも同じことをしたのはただの最終確認だった。
残像領域には幽霊がいる。
何故彼らが存在するのか、おれはその理由を知らない。ただ、曖昧な場所は生死の境も曖昧なんだろうと最近は考えている。
そして同じくらいあらゆるものが不確かなここなら、もしかしたら、似たような現象が起こるのかもしれないとも。
おれは振り返った。
もう何度も見た、死装束に似た白い服。痩せさらばえた長身、輪郭が霞んだその姿。おれは思う。顔は見えないけれど、こいつはこの前の遊園地の夢で見た誰かに似ている。
おれと向き合ったそれは酷く驚いた顔をして、そうしてすぐに消えた。
(……これではっきりしたな)
おれ達の誰か一人がシトリン・マーケットにいないとき、あの白い影は出なかった。あいつが店に出たのはおれ達三人が揃っている時だけだ。
一方で、こうして一人で外出していると、あいつはそっちについて来た。おれ達が一人きりでいるのを放っておけないとでも言うように。
あいつはおれ達兄妹に憑いている。
そうしておれには、その心当たりがあるのだった。
6日目
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
ゴリラウェーブは嵐のように訪れて、そして去っていった。おれ達の予想に反してゴリラはきっちりと料金を払い、めいめいその手に品物を抱えて帰った。彼らは一体どこに帰ってゆくのだろう。順当に考えるならジャングルの奥地なのだろうが、果たしてコンビニで売られている商品がそんな場所で役立つのだろうか。それともあのゴリラ達は自分達なりの文明を持っていて、夕闇国と繋がっているどこかの世界に、ゴリラしか住んでいない都市などがあるのだろうか。考えていたら頭が痛くなってきたので、この辺でやめておくことにする。
大変だったのは閉店後だった。いくらゴリラ達が野生生物としてのそれに比べて礼儀正しかったとはいえ、あの巨体が大勢で店に押しかけたのだ。陳列棚はめちゃくちゃで、床一面に商品が散乱していた。天井から吊り下げた人工シトリンもあちこちでワイヤーからちぎれて転がっていた。このままの状態で明日の開店を迎えるわけにはいかない。おれ達三人と、自動人形を総動員して店の復旧作業にかかった(ゴリラに踏まれて駄目になってしまった食品類を廃棄するのは悲しかった)。妹達に時折休憩を取らせつつ、どうにか片付けが終わった頃には日付が変わっていた。明日も何とか開店できそうだ。
業務日誌6日目、補足。
妹達を寝かせ、自動人形に留守番を任せたあと、おれは一人で外出した。おれが残像領域から持ち込んだデジタル時計は夜中の三時を指しているが、ここはいつでも夕暮れ時の夕闇国。頭上は菫色にたそがれていた。路地から路地へ、暮れる街をおれは歩き続けた。
ここでは街と道と路地の境界はいつも揺らぎ、不定期にその構造を変える。おれ達三人には通った場所を電脳内で自動的にマッピングする機能があるが、この世界はあまりにでたらめなのでまるで役に立たない。店にいる妹達の信号をトレースすれば帰ることはできるので、あまり困ってはいないが。
ただ、この機能が今まで役に立ったことはあるだろうか。思わず笑ってしまう(思い出し笑いがおれにもできるようになっていたことに気がついた。嬉しい)。おれがいた残像領域はいつも分厚い霧に覆われて、ひどい時には側にいるはずの僚機の確認もおぼつかないほどだった。そんな有様だからおれ達の目視だけでは心許なくて、ウォーハイドラ『バーントイエロー』のセンサーも使ってマッピングした。そういって得た地形のデータすら、戦火の中ではミサイルや速射砲の直撃によって、変動し、次の出撃では役に立たないということがざらだった。
けれど、おれはそれに馴染んでしまっている。分からないこと、あらゆるものを覆う霧の中で手を伸ばし、見えもしない空を見上げること、存在しないかもしれない声に耳をすませること、そういったことにおれは慣れ親しんでいる。何もかもが日の元にはっきりと、その白黒を晒される世界があるとしたら、きっとおれはそれに耐えられないだろう。おかしな話だ。おれの体のほとんどは機械で、おれの生身の部分も0と1の羅列で支配されているというのに。
その点では、そう、この夕闇国の曖昧さは心地よかった。
そしてこうも思うのだ、もしかしたら、と。
ある路地を抜けると、開けた場所に出た。それは高台で、暮れなずみ、位置が徐々に移ろう街並みを見下ろせた。立ち並ぶ建物はどれも、くすんだ紅と橙に染まっている。
立ち止まったおれの背後に、気配がした。
(予想通り、だったな)
目を伏せる。まぶたの裏にはおれの体をモニタリングした無数の数値が映っている。わずかに心拍数が上がっているのが確認できた。緊張している。
おれは昨日、ヴェラとアニカにも片付けの合間を縫って、一人きりで外出をさせていた。そして彼女達は、揃って外出先で同じ現象に遭遇した。それでほぼ確信はしていたのだ。おれも同じことをしたのはただの最終確認だった。
残像領域には幽霊がいる。
何故彼らが存在するのか、おれはその理由を知らない。ただ、曖昧な場所は生死の境も曖昧なんだろうと最近は考えている。
そして同じくらいあらゆるものが不確かなここなら、もしかしたら、似たような現象が起こるのかもしれないとも。
おれは振り返った。
もう何度も見た、死装束に似た白い服。痩せさらばえた長身、輪郭が霞んだその姿。おれは思う。顔は見えないけれど、こいつはこの前の遊園地の夢で見た誰かに似ている。
おれと向き合ったそれは酷く驚いた顔をして、そうしてすぐに消えた。
(……これではっきりしたな)
おれ達の誰か一人がシトリン・マーケットにいないとき、あの白い影は出なかった。あいつが店に出たのはおれ達三人が揃っている時だけだ。
一方で、こうして一人で外出していると、あいつはそっちについて来た。おれ達が一人きりでいるのを放っておけないとでも言うように。
あいつはおれ達兄妹に憑いている。
そうしておれには、その心当たりがあるのだった。
STORY
とうとう完成したオリハルコン金魚接客マシン赤く炎のごとく燃える金魚は次々とお客様をひきつける
コンビニの売り上げも堅調に推移し、予算をゆっくりと回収していった……
さなえは静かに夕暮れの街を見る
「もし経営がうまくいったとして、みんな金魚になってどうすればいいんだろう」
「呪いは破らなくちゃ。でも、その方法が分からずに、とりあえずお金を稼いでいる」
視界の端をポコポコドラミングするゴリラが横切る
「金魚の知恵しかないからよくわからないや」
さなえは自嘲した。どうしようもない世界で、どうしようもない状況で、理解できることは少ない
ただ、売り上げの増減だけはひどく単純で、金魚の知恵でも理解可能で、ひとつの真っすぐな道を示していた
――ひとつの真っすぐな道を、示している――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が19上昇した
機転の訓練をしました機転が17上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
イエローズは虚無飲食物を破棄した!
イエローズは虚無酒類を破棄した!
イエローズは虚無雑誌を破棄した!
イエローズは虚無書籍を破棄した!
イエローズは虚無高級品を破棄した!
イエローズは虚無日用品を破棄した!
◆購入
イエローズはシルバーバナナを576闇円で購入した!
イエローズは深淵からの呼び声を1267闇円で購入した!
◆作製
時代の風40と入店チャイム40を素材にして投稿!怖い話vol.6『魔除けのススメ』を作製した!
◆コンビニタイプ決定
ホワイト に決定!!
◆アセンブル
スロット1にヴァイス・ローゼン・ヨーグルトを装備した
スロット2にシルバーバナナを装備した
スロット3にキング・クラブ・バーガーを装備した
スロット4にりんごを装備した
スロット5にレシピ付きスパイスセットを装備した
スロット6に敗者にならない技術vol.1を装備した
スロット7に世界最先端!接客用オートマタの世界を装備した
スロット8にシトリンの一粒シルバーリング(非加熱)を装備した
スロット9に深淵からの呼び声を装備した
スロット10に投稿!怖い話vol.6『魔除けのススメ』を装備した
スロット11にピザ~クリスマスVer~を装備した
スロット12に古びた懐中時計(機械式・手巻き型)を装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 2654
貢献収入 433
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 13%
合計闇円収入3662
商品販売数 1個
◆経験値が41増加しました……
◆体力が90増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献収入 433
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 13%
合計闇円収入3662
商品販売数 1個
◆経験値が41増加しました……
◆体力が90増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
イエローズは肝臓44を入手した!
イエローズは有給44を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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どこぞの霧深い世界からやってきた、サイボーグの三人兄妹。 サイボーグなので、腰から尻尾のような充電ケーブルが生えている。 生活費を稼ぐべくとあるバイト募集のチラシを手に取ったところ、 夕闇国でコンビニの店長をする羽目になってしまった。 兄:リオ・B・ミナスジェライス 青年型サイボーグ。外見年齢は十代後半ぐらい。 三兄妹で一番感情表現が下手くそ。最近やっと笑顔が作れるようになってきた。根は素直。 最年長ということでコンビニ「シトリン・マーケット」の店長を押し付けられた苦労人。 勤務日記も彼が書いている。兄の性か。 妹その一:ヴェラ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ロングヘアーの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その一。アニカとは双子。いつも穏やかに笑っているおっとりさん。 勤務中に歌い出してしまうのが玉に瑕。 妹その二:アニカ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ツインテールの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その二。ヴェラとは双子。よく笑いよく走るおてんばさん。 勤務中に踊りだしてしまうのが玉に瑕。 コンビニ「シトリン・マーケット」 リオ達が経営を任せられた小さなコンビニ。 天井からは黄水晶(紫水晶を加熱して作った人工モノ)のドロップが装飾として いくつもいくつも吊り下がり、看板はけばけばしい黄金色をしている。 外には異世界の魔王から委託されたという多肉植物の無人販売所が併設されている。 最近店舗に幽霊が出るらしい。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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