第8週目 『無名』’’有想霧像’’の一週間
◆日記
赤く暮れていく夕焼け空が見える。店の天井にぽっかりと穴が空いてみるみるうちに広がっていって、そこから見間違えようもない空が見える。
それなのに店の中には何も降ってこない。天井の板も、梁も、砂や埃さえ。そういうもの全部が、まるで見えない何かに飲み込まれているみたいに消えていく。
買い物をするゴリラなんか目じゃない。ゴリラだっておかしいけど、こっちの方がもっとおかしい。
何が起きているんだろう。目眩がする。立っていられなくてぺたりと座り込んだ膝に、スカート越しでもわかる石の感触。
もうそこには床さえもなかった。私はひとり、品物の散乱するだけの空き地に投げ出されていた。
本当になんだかわからない状況になった時には、驚きの声さえも出てこないらしい。
どれくらいそのままでいたのか、私にはよくわからなかった。ただずっと空を眺めていて、その赤い空さえ実際は目玉に映っていただけで、そこから頭に行ってはいなかった。興味のない話が耳を左から右に通り過ぎるみたいに。
買い物をするゴリラ、いきなり消えてしまうお店、それでも残っている品物。そういえば私はこの品物をどこから買ったんだっけ。
旅行に来た人達が足止めされてしまうほどの雪の中で、いつも品物を持ってきてくれる商人さんが来られるわけないのに。そしてこんなにたくさんのものは、とても村の中だけで用意できるものではないのに。
その疑問がずっと頭の中を駆け巡っていて、けれども答えなんて出るわけなかった。村の中しか知らない私にわかることも、思いつくことも、そんなに多くはなかったから。
だけどそんな私でも、気付けてしまえることはあったのだ。
いつまで経っても沈まない陽と、慣れ親しんだ風景の見えない外。赤々と照らされる、どこまでも似たような建物ばかりが並ぶそこが、――どこなのか、わからない。
よく似た四角い形の建物は一様にこれまた似たような形の看板を出している。ただの家は看板を出さないと思うから、きっとお店なんだろうというのは察しが付いた。
どの建物の窓からも明るい光が漏れていて、看板も似たように夕闇の中で月よりずっとまぶしく輝いている。ランプの火を間近で見たって、あれほど明るくないだろう。
その光で夕まぐれはずっと見通しがいい。なのにお向かいの家も、教会の鐘も、すぐ近くにあったはずの山も、どこにも見えなかった。
ここは村じゃない。私はずっと、いつものようにお店の中にいただけなのに。そこから出たら知らない場所だったなんて――いや、私はそもそもお店から出ようとさえ思っていなかったのに。
何が起きたのか分からなくて、まるで子供のように泣いてしまいそうだった。もうそんな年でもないはずなのに。そう思っていながらも視界は滲んできて、頼りたい人の名を呼ぶ、声が。
「…………あれ?」
出なかった。
私は、誰の名前も呼べなかった。
思い出せるところをいくら探しても、誰一人の名前も思い出せなかった。
いつもお肉やミルクを頼んでいる農場主さんも、そこで働いている人達も、よくお店に来てくれる裏通りの奥さんも、いつも同じ種類のタバコを買っていく向かいのおじさんも、山備えの道具を買っていく猟師さんも。
みんな顔は思い出せるのに、その名前だけが削られたみたいに思い出せない。
「……神父さま。商人さん。おまわりさん。奥様」
呟くみたいに呼んだ名前も、どれひとつとして「名前」ではなかった。
知らないはずのないそれを私は知らなかったから、それ以外に口に出せる呼び名なんてなかった。
「店長……」
ずっとお世話になってきたその人のことさえ、私はそうとしか呼べなかった。
このお店の屋号、そして私の名前。それにつながるその人の名前さえ、私の頭の中には影も形も見当たらなかった。
それなのに店の中には何も降ってこない。天井の板も、梁も、砂や埃さえ。そういうもの全部が、まるで見えない何かに飲み込まれているみたいに消えていく。
買い物をするゴリラなんか目じゃない。ゴリラだっておかしいけど、こっちの方がもっとおかしい。
何が起きているんだろう。目眩がする。立っていられなくてぺたりと座り込んだ膝に、スカート越しでもわかる石の感触。
もうそこには床さえもなかった。私はひとり、品物の散乱するだけの空き地に投げ出されていた。
本当になんだかわからない状況になった時には、驚きの声さえも出てこないらしい。
どれくらいそのままでいたのか、私にはよくわからなかった。ただずっと空を眺めていて、その赤い空さえ実際は目玉に映っていただけで、そこから頭に行ってはいなかった。興味のない話が耳を左から右に通り過ぎるみたいに。
買い物をするゴリラ、いきなり消えてしまうお店、それでも残っている品物。そういえば私はこの品物をどこから買ったんだっけ。
旅行に来た人達が足止めされてしまうほどの雪の中で、いつも品物を持ってきてくれる商人さんが来られるわけないのに。そしてこんなにたくさんのものは、とても村の中だけで用意できるものではないのに。
その疑問がずっと頭の中を駆け巡っていて、けれども答えなんて出るわけなかった。村の中しか知らない私にわかることも、思いつくことも、そんなに多くはなかったから。
だけどそんな私でも、気付けてしまえることはあったのだ。
いつまで経っても沈まない陽と、慣れ親しんだ風景の見えない外。赤々と照らされる、どこまでも似たような建物ばかりが並ぶそこが、――どこなのか、わからない。
よく似た四角い形の建物は一様にこれまた似たような形の看板を出している。ただの家は看板を出さないと思うから、きっとお店なんだろうというのは察しが付いた。
どの建物の窓からも明るい光が漏れていて、看板も似たように夕闇の中で月よりずっとまぶしく輝いている。ランプの火を間近で見たって、あれほど明るくないだろう。
その光で夕まぐれはずっと見通しがいい。なのにお向かいの家も、教会の鐘も、すぐ近くにあったはずの山も、どこにも見えなかった。
ここは村じゃない。私はずっと、いつものようにお店の中にいただけなのに。そこから出たら知らない場所だったなんて――いや、私はそもそもお店から出ようとさえ思っていなかったのに。
何が起きたのか分からなくて、まるで子供のように泣いてしまいそうだった。もうそんな年でもないはずなのに。そう思っていながらも視界は滲んできて、頼りたい人の名を呼ぶ、声が。
「…………あれ?」
出なかった。
私は、誰の名前も呼べなかった。
思い出せるところをいくら探しても、誰一人の名前も思い出せなかった。
いつもお肉やミルクを頼んでいる農場主さんも、そこで働いている人達も、よくお店に来てくれる裏通りの奥さんも、いつも同じ種類のタバコを買っていく向かいのおじさんも、山備えの道具を買っていく猟師さんも。
みんな顔は思い出せるのに、その名前だけが削られたみたいに思い出せない。
「……神父さま。商人さん。おまわりさん。奥様」
呟くみたいに呼んだ名前も、どれひとつとして「名前」ではなかった。
知らないはずのないそれを私は知らなかったから、それ以外に口に出せる呼び名なんてなかった。
「店長……」
ずっとお世話になってきたその人のことさえ、私はそうとしか呼べなかった。
このお店の屋号、そして私の名前。それにつながるその人の名前さえ、私の頭の中には影も形も見当たらなかった。
STORY
夕闇国の夕空は燃えるように輝くオリハルコンの金魚マシンは、夕日を受けてやはり火焔のごとき輝き
「いつまで続ければいいんだろう、フランチャイズの店長さんの契約もそろそろ終わり」
さなえは静かに夕暮れの街を見る
「金魚の知恵だからって、このままじっとしていていいのかな……」
「私は全力で生きている……? ひいおじいちゃんが教えてくれたこと……」
視界の端をポコポコドラミングするゴリラが横切る
「この世で最もか弱きものが、胸を張って堂々と生きれたら、それが最高に素晴らしいことだって」
さなえは曾祖父からゆらぎの力を受け継いでいた。さなえが胸を張って金庫の扉を開けたとき……
そのときゆらぎの審判によって金庫の中身が決まるという
「自信がないよ……正しく生きれているのか。もし正しく生きていないと裁かれたら……ごぼぼっ!?」
言葉が泡で詰まる。はっと自分の両手を見る。それは紛れもなく金魚の鰭であった
――この世で最もか弱き金魚に――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が30上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
無名はぐい呑みセットを破棄した!
無名は輝ける豆腐を破棄した!
無名は店長おすすめのロウソクを破棄した!
無名はいつかの祝杯を破棄した!
無名は泡沫商材を破棄した!
◆購入
無名は改装のため一時閉店しますと書かれた紙を564闇円で購入した!
無名はすごいこっぺぱんを600闇円で購入した!
無名はキム●イプを600闇円で購入した!
◆作製
おもちゃのナイフと水郷の水酒を素材にして門出の祝い膳を作製した!
◆コンビニタイプ決定
ホワイト に決定!!
◆アセンブル
スロット1に失敗どぶろくを装備した
スロット2に白檀香を装備した
スロット3にあのカードを装備した
スロット4に鸚鵡印の発泡酒を装備した
スロット5に鸚鵡印の発泡酒を装備した
スロット6に刻沙を装備した
スロット7に改装のため一時閉店しますと書かれた紙を装備した
スロット8にいつもの看板商品を装備した
スロット9にパチモンカップヌードル(フィギュア付)を装備した
スロット10にすごいこっぺぱんを装備した
スロット11に門出の祝い膳を装備した
スロット12に小さな一筆を装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 2137
貢献収入 363
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 15%
合計闇円収入3018
商品販売数 2個
◆経験値が47増加しました……
◆体力が102増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献収入 363
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 15%
合計闇円収入3018
商品販売数 2個
◆経験値が47増加しました……
◆体力が102増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
無名は日々の挨拶48を入手した!
無名は大量消費社会48を入手した!
無名はセールのチラシ48を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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とある辺境の村にある、たった一軒の雑貨屋の看板娘。まとめもしない長い黒髪がトレードマーク。 ある日ある時の夕暮れ、黄昏時を通じて店ごと「夕闇国」に迷い込んだ。 心より己をそう信じて生きる、人の形をした人でないもの。 無名のまま死んだ魂たちを、意識もせぬうちに統べる少女。 何かに名を残すほどの害意も熱意も持つことのできない、無名を宿命づけられたまま生きる存在。 爛漫あるいは天然と呼ぶべき少女と、彼女にまったく認識されないままその側にいる無数の影たち――群像と名乗る存在で構成される群体である。 ―――― プロフ絵、IC0~6番:ゆゆづき様「キャラクターメーカー」で作成しております IC8~13番、23番:十con様ご提供のアイコンを使用しております | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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