ENo.0015　クライカリオス・E・ユルング

今日も今日とてカオスな客の相手をしている。
この客達は、ものすごい勢いで来店したかと思えばあっという間に買うもの買って消えちまう。通りで姿を見かけない感じからして、本来の世界に戻ってたりするのかもしれない。財布の紐は緩いのか硬いのかよくわからないが、それでもソコソコ買い込んで行ってくれるので発注した分が無駄になる事がないって事だけは幸いと言えた。


しかし、それにしても……と思う。何だろうな本当。ここにくる客はどいつもコイツも普通じゃない。

俺もソコソコ色々な世界を渡り歩いてる身だ。コンビニバイトは初だが、対人のバイトは実は初というワケじゃない。（とはいえ、前のは下町のお好み焼き屋の手伝いだったもんだったから雰囲気はかなり違うわけだが）でもそんなバイト経験の中でもこいつらみたいなカオスな奴らはそうそう居ないと思う。
とはいえ、一応生き物っぽい奴らばっかりだからまだ良いのかもな……前に暫く滞在してた世界じゃ、おでんが走ったりエリンギが唸ってたりしたからな……アレよりはマシか。うん。

後アレだ、客と言えば後半によく来るおっさん。毎回何か買ってってくれるんだが他のコンビニにも姿を見せるらしい。財布大丈夫なのか。裕福なのか。石油王か。……どの世界でも富裕層ってのはいるもんだな。買い物客の中には買い物したくてももう買えない、とかってなってたやつもチラホラいたってのに。
俺もできればそういう裕福さにはあやかりたいもんだぜ……あ、いや、別に金目のものに興味があるってわけじゃないんだけどな。でも無いよりは在ったほうが豊かに自然に溶け込んで暮らせるってものだ。郷に入っては郷に従え。竜族の末端に居るような身とはいえ、こういう文明社会の中で悪目立ちはしたくない故の発想ってやつだ。

他の店、といえば何か知った顔が他にもチラホラ居るっぽいことが判明した。とはいっても、覗きに行ったりはしてないんで本当かは知らないけどな。こっちに来店してきたり訪ねてくるヤツもそこそこ居る。マルコフが来店した時はマジでびびった。
っつーか、わざわざこっちにヴァイス・ローゼン・コーヒー買いに来たのかよ。物好きだなぁとは思う。そういや、アイツがどこだったか潜伏しつつ商売してる所に偶にこの飲み物卸すんだよな。異世界産なんで割りと手間が掛かる分高く金はとってたりするんだが、まあコレは別の話だ。



さてと、とりあえず次の発注をこの後済ましてしまうとしようかね。
期間限定品を見掛けたんで取り寄せたんだ。客の好みに合うかどうかは別としても、売り出してみて反応を見てみるのもまあ悪くはないってなもんだろうさ。きっとな。