ENo.0042　グリアル行衛

「あら、やっぱり案外近くにあるものね」

某日、仕入れとかでバタバタしていたのが落ち着いた（と言うより単に気が起きなかった）ので、少し周りを散策していた。

「まァよくわかんねェ商品が入荷できたりゴリラの波とか起こるくらいだし、コンビニの数歩先にコンビニとかそう珍しくも無いンだろーな」

「あらあそこの動物？動物よね、コンビニ経営してる上に喋ってるわ！どんな呪いをかけられたのかしら？わっ、あの本すごく興味がある！おいくら？ってどのみち買うのだけど！」

無邪気にはしゃぐ彼女は何故か自分の名を伏せ『白い魔女』と名乗ったが、なんだかまた忘れそうな気がして特に伏せる理由を聞こうとは思わなかった。

とはいえ忘れさせたのは他でもない彼女らしいのだが。

「…楽しい？」

「えぇ、とっても！今まで過ごした人生…いえ、まあ、もう私は亡き者なんだけどね、二番目に楽しいわ」

「二番目？」

「そうね、一番はグリアルと始めて会った時かしら？あの頃からだいぶ変わった人だったわよ、貴方」

「……覚えてねェから実感が湧かねェな…」

「…」

バツが悪そうな顔を見せ、しばらく無言で歩き続けたがすぐに

「…今の貴方ならきっと気にしないのでしょうけど、あまり私の事引き摺って生きていく貴方を私が許さないのよね…」

風で掻き消されそうな程小さく呟いた。
初めて聞いた彼女の弱気な発言に心底ビックリした。
いや、もしかしたら初めてじゃないのかもしれないんだけど。

そのあと何事も無く二人で色んなコンビニを視察（エンジョイ）し、彼女は満足そうに書物やら食物を買い込んだ。