ENo.0086　『風食む白き牙』の魔王

『風食む白き牙』の魔王
「ご破算で願いましては…　光高級品113円なり、活気飲食物31円なり…」



茶摘みの女性
「魔王さま、練習熱心ですね。」



魔王
「ああ。お前たちが頑張っているのに、私が足を引っ張る訳にはいかんからな。」



パン屋の青年
「ソロバンを使い始めたものの計算間違いは直らずで、しかも以前より手間取ってるものですから…
結局、レジが混み合っただけになってしまってますものね。」



魔王
「だからいきなり実践はやめろと言ったんだ！！」



女性
「でも、始めた頃よりはずいぶん上達していますよ？　魔王さま。
繰り上がりの計算もできるようになりましたし。あとは正確にできれば文句なしです。」



魔王
「うむ。期待に応えられるよう、研鑽を重ねなければな。」



青年
「あー　魔王さま、そのことでちょっと気になることがあるんですが…」



魔王
「なんだ？」



青年
「魔王さまの会計を見ていると、お客様がひとりだけなら正しく計算されてるみたいですが、
レジに列が出来た途端に間違いだしているように思うんです。」



魔王
「うッ…」



青年
「もしかして、焦ってません？」



魔王
「し、仕方ないだろう！　客を長々と待たせることはできん！　急いで捌かねば…ッ！」



女性
「それで計算が雑になってしまっては元も子もありませんよ。
落ち着いて、けれども手早く計算できるようにならなくては。」



魔王
「う、うむ…」



青年
「少しくらいゆっくりでもいいんですよ、魔王さま。間違えるよりはマシですよ。」



魔王
「そうか…　わかった、努力しよう。」



魔王
「しかし、焦って間違えるといっても、十の位と百の位を取り違える程度なのだがなぁ？」



女性
「その間違い、収支にかなり響きますよ魔王さま…」