ENo.0095　ライカ

---------------------------ｷﾘﾄﾘｾﾝ---------------------------



気が付けば、ここでの日々も、とうに折り返し地点を過ぎていた。
地獄の沙汰も金次第なんて言うけれど、稼いだ金がどれだけ役に立つのかは分からない。
それでも、あの子は毎日、なんだかんだと真面目に職務をこなしているようだ。
俺はというと、まあ似たような感じで、今日もまたふざけた衣装に身を包んで店先に立っていた。
こんな格好が出来るのも今のうち。
いや、やろうと思えばいつだって出来るのだけど、爛れた半面でやっても、きっと今ほど楽しくはないだろう。
「顔の造形だけはイイ」なんて、あの子にしては中々気の利いた皮肉だ。
むしろ、皮肉のつもりで言っていないところが効果的というか。
外側まで醜くなった有様で勝者を騙り続ける妖精というのも、角を失くした鬼以上に無様だなと、他人事のように振り返って笑ってしまった。

勿論、後悔はしていない。
おれはなにひとつうしなっていない。
ただいつか本当に奇跡が起きて――或いはあの子の努力や執念がそれに見合う成果を上げて、今や手の届かない現実へ至る華麗な復活劇を成し遂げたとき、取り残される俺はたぶん初めて敗北するのだろうと、思う。