ENo.0042　グリアル行衛

普通の時間軸ならおそらく深夜なのだが、相変わらず夕焼け差し込む店内のスタッフルームで変わらず新しい商品の開発。
そろそろ区切りをつけようと顔を上げると人影。
案の定、彼女は落ち込んだ様子で姿を見せた。

「だめだわ、死んだからこそできそうな術とかありそうな気がしたのだけど…そもそも召喚術以外の才能が無いのを忘れていたわ」

いつしかの黒書の内容は彼女の世界では教科書、いわゆるチュートリアルのようなものだったらしい。
魔術のチュートリアルって言うのも言い得て妙…ではない、少なくともこっちでは違和感しかない。

「いやさ…前にアンタも言ってたけど、夢みたいなモンだからそこまでマジにならなくてもいーんだけど…」

「それに俺は本当に後悔してねェよ？確かに今もこうやって昔を忘れ続けてるけど、誰だっていつか忘れンだろーし」

「まァ肝心なコトも忘れてるんだけどさ…アンタが生きてた頃に一緒にいた俺ァ幸せだったろうよ、こうやって死んででも会いに来てくれてるくらいにゃ好いてくれてたンだろ？」

「」

「？」

「…何処でそんな言葉覚えてきたのよぉ…そりゃ好きでしたけどぉ…」

途端、彼女は顔を覆って出てきた道をそのまますごい勢いで戻っていった。
持っていた本をその場に落として。

「…もしかして俺ァ変な事を言ったのか？」


とりあえず落とされた本を拾い適当な本棚にでも突っ込んでおこうとして一応表紙だけでも見てみる、よし、さっぱり分からない。