第2週目 パロットの一週間
◆日記
「起きろ」
「ふえ?」
いつの間に寝ていたのだろう。
降ってきたのは、聞き覚えのあるような、ないような声だった。
重たい頭を上げて、寝ている間に口の端から垂れていた涎を拭く――涎?
思わず自分の手を見る。手だ。色の薄い、ところどころ血管が透けて見える大きな手。手首、腕、それから。見回してみれば、手や腕だけじゃない。胴体があって、足があって、つまりこれを見ている俺の顔もあるってことだ。
そんなはずはない。
だって、俺は――。
「起きたな」
もう一度、今度こそはっきりと俺のすぐ背後から聞こえてきた、声。
振り向けば、やたら丹精な顔立ちをした黒髪のにーちゃんが、紫色の目で俺を見下ろして――もしくは「見下して」――いた。
もう、何が何だかさっぱりわからんが、とりあえず。
「お……おはよう?」
朝の挨拶は大事かなと思った。
「おはよう。気分は……、まあ聞いたところで無駄か。状況は理解してるか?」
「いや全く」
「だよなー。そうだと思った」
あっ意外とゆるいぞこのにーちゃん。ちょっとほっとした。だって見た目超堅物そうだったから。
「多分何も覚えていないだろうから、最初から説明しよう。俺の名は……まあ、便宜上リブラと呼んでくれ」
「便宜上」
「便宜上だ。で、俺のことはともかく、お前自身のことは思い出せるか?」
「……生前のことはさっぱりだが、死後なら、まあ、少しは」
そう、俺は死人だ。死人だという自覚はある。
いつ死んだのかも、どんな人間だったのかもろくに覚えちゃいないが、とにかく俺は何か色々あって死んで、だけど死に切れなくて幽霊になった。問題は、何でこの世に執着しているのかも忘れちまって、消えるに消えられなくなっちまったことだ。
馬鹿だなー、俺。この分だと生前も相当な馬鹿だった自信はあるぞ。そんな自信いらなかったよ。
しかも、生身の脳味噌がないからなのか何なのか、死後に起こったことだってぼろぼろ忘れていく始末だ。近頃はそれが加速していて、そろそろ寿命なんじゃねーかと思ってたところだ。幽霊に寿命があんのかもさっぱりしないが。
それでも、かろうじて頭に引っかかってることは、あって。
「パロット、って、呼ばれてたと思う。あと」
「あと?」
「人の形はしてなかったはず」
「そうだな。お前は死後、肉体を失い物質に憑くことでかろうじて存在を保つ幽霊だった。ただ、それもそろそろ限界で、消滅を迎えようとしていた」
「なら、何で俺ここにいるんだ? 頭もやたらすっきりしてるし、生き返ったの、俺?」
「いや、お前はあくまで死者だ。その肉体もあくまでかりそめ、生前のお前の形をベースに、俺が構築したものだ」
「え、何、それはそれですごくね? お前神様かなんか?」
「……そんなに偉い存在じゃねーよ」
「?」
「いや、悪い。とにかく、俺がお前を一時的に実体化させてること、そして今のお前は俺の命令を聞くためだけに存在していることだけわかっとけ」
「横暴だな神さん!?」
「神じゃないって言ってんだろ。名前で呼べ」
「便宜上リブラ」
「便宜上は名前じゃない」
「あー、つまり、俺様は今からリブラの言うことを聞けばいいのか?」
「案外素直だな」
「んー、それ以外に特にすることねーしさ。体があるから色々できるのかもしれねーけど、やりたかったことも、ぱっと思い出せねーし」
「そう、か」
「だから、いい暇つぶしだと思うことにする。無理難題じゃなきゃなんでもいいぜ?」
「……何、そう難しいことじゃない」
リブラは、今まで手ぶらであったにもかかわらず、突如として虚空からやたらと分厚い紙束を取り出して、俺に手渡して言う。
「お前には、今からコンビニの店番をしてもらう」
「……こんびに?」
「そこからかー」
でも、そういえばここ、見たことのない場所だよな。今まで俺がどこにいたのかもちょっとふわっとしてて思い出せねーけど。
棚が所狭しと並んでいる辺り、確かにリブラの言うとおりなんか「店」っぽくはある。
リブラは、こめかみの辺りをぐりぐりやりながらも、ご丁寧に答えてくれる。
「コンビニエンスストア。食料品や嗜好品、日用品など何でも売る場所だと思ってくれればいい」
「何でも?」
「結構何でも扱う」
「酒も?」
「あー……、そうか、お前、酒好きだっけなー……」
「あっ、その反応は売ってもいいってことだな!」
「お前『売る』って言いながら絶対自分で飲みてーだけだよな!?」
「バレたか……」
「いいや、その辺は好きにしろ。必要事項はマニュアルに書いてあるから熟読しろ」
「あっこの紙束マニュアルなんだ。……めんど」
「読めよ?」
「はい」
「まずはマニュアル見ながら適当にやってみろ。仕入れる商品や売り方はお前に任せる」
「おう、まあ、期待なさらず」
「ああ。また気が向いたら様子を見に来る。それまで精々励めよ」
――そうすれば、もしくは。
何だか気になることを呟いて、リブラはその場から忽然と消えた。……ほんとに何者だったんだろう、あいつ。俺の同類にも見えなかったけど。
まあいいや、まずは酒飲みながらマニュアル読むか。熟読しろって命令されちまったしな。面倒は面倒だが、それでも体があるおかげで長らく遠ざかっていた酒は味わえるし、美味いものだって食えるし、この二本の足で歩いていくことだってできるんだ。店っつったって一日中やるわけじゃねーだろうし、外を散歩するのも楽しそうだ。
そんなことを思いながらマニュアルの表紙を開くと、真っ赤な文字ででかでかと書かれた文面が目に飛び込んできた。
「最重要禁止事項:コンビニから出る(理由:肉体どころか魂ごと消し飛ぶ)」
……オーケイ。
どうやら俺は自由かと思いきや、案外そうでもないらしい。
でもまあ、ふわふわした幽霊生活よりは全然マシ、と思うことにして、まずはコンビニとやらをやってみようじゃないか。
だって、何もかもが初めてなんだ。忘れてるだけかもしれないけれど。楽しいか楽しくないかなんて、やってみなきゃわからない。楽しくなかったら、その時、あのリブラとかいうにーちゃんに文句を言えばいいだけだ。
さあ、新しい生活を始めよう。
この夢みたいな日がいつまで続くのかは、俺にも、よくわかんないけれど。
【Log:01 鸚鵡は猫箱で目覚める】

いつの間に寝ていたのだろう。
降ってきたのは、聞き覚えのあるような、ないような声だった。
重たい頭を上げて、寝ている間に口の端から垂れていた涎を拭く――涎?
思わず自分の手を見る。手だ。色の薄い、ところどころ血管が透けて見える大きな手。手首、腕、それから。見回してみれば、手や腕だけじゃない。胴体があって、足があって、つまりこれを見ている俺の顔もあるってことだ。
そんなはずはない。
だって、俺は――。
「起きたな」
もう一度、今度こそはっきりと俺のすぐ背後から聞こえてきた、声。
振り向けば、やたら丹精な顔立ちをした黒髪のにーちゃんが、紫色の目で俺を見下ろして――もしくは「見下して」――いた。
もう、何が何だかさっぱりわからんが、とりあえず。

朝の挨拶は大事かなと思った。



あっ意外とゆるいぞこのにーちゃん。ちょっとほっとした。だって見た目超堅物そうだったから。




そう、俺は死人だ。死人だという自覚はある。
いつ死んだのかも、どんな人間だったのかもろくに覚えちゃいないが、とにかく俺は何か色々あって死んで、だけど死に切れなくて幽霊になった。問題は、何でこの世に執着しているのかも忘れちまって、消えるに消えられなくなっちまったことだ。
馬鹿だなー、俺。この分だと生前も相当な馬鹿だった自信はあるぞ。そんな自信いらなかったよ。
しかも、生身の脳味噌がないからなのか何なのか、死後に起こったことだってぼろぼろ忘れていく始末だ。近頃はそれが加速していて、そろそろ寿命なんじゃねーかと思ってたところだ。幽霊に寿命があんのかもさっぱりしないが。
それでも、かろうじて頭に引っかかってることは、あって。




















リブラは、今まで手ぶらであったにもかかわらず、突如として虚空からやたらと分厚い紙束を取り出して、俺に手渡して言う。



でも、そういえばここ、見たことのない場所だよな。今まで俺がどこにいたのかもちょっとふわっとしてて思い出せねーけど。
棚が所狭しと並んでいる辺り、確かにリブラの言うとおりなんか「店」っぽくはある。
リブラは、こめかみの辺りをぐりぐりやりながらも、ご丁寧に答えてくれる。















――そうすれば、もしくは。
何だか気になることを呟いて、リブラはその場から忽然と消えた。……ほんとに何者だったんだろう、あいつ。俺の同類にも見えなかったけど。
まあいいや、まずは酒飲みながらマニュアル読むか。熟読しろって命令されちまったしな。面倒は面倒だが、それでも体があるおかげで長らく遠ざかっていた酒は味わえるし、美味いものだって食えるし、この二本の足で歩いていくことだってできるんだ。店っつったって一日中やるわけじゃねーだろうし、外を散歩するのも楽しそうだ。
そんなことを思いながらマニュアルの表紙を開くと、真っ赤な文字ででかでかと書かれた文面が目に飛び込んできた。
「最重要禁止事項:コンビニから出る(理由:肉体どころか魂ごと消し飛ぶ)」
……オーケイ。
どうやら俺は自由かと思いきや、案外そうでもないらしい。
でもまあ、ふわふわした幽霊生活よりは全然マシ、と思うことにして、まずはコンビニとやらをやってみようじゃないか。
だって、何もかもが初めてなんだ。忘れてるだけかもしれないけれど。楽しいか楽しくないかなんて、やってみなきゃわからない。楽しくなかったら、その時、あのリブラとかいうにーちゃんに文句を言えばいいだけだ。
さあ、新しい生活を始めよう。
この夢みたいな日がいつまで続くのかは、俺にも、よくわかんないけれど。
【Log:01 鸚鵡は猫箱で目覚める】
STORY
夕闇国にチラシが舞う。その日の新聞の夕刊(夕刊しかない)に大々的に告知されるコンビニの開店夕闇国に現れた謎のお客様は、物珍しさに次々と来店する。それはまさに餌を食らう鯉のごとく
謎のお客様が正常な思考を持っていない何かでも、構わず商売する土壌が夕闇国にはあった
なぜなら夕闇国はゆらぎの国。あらゆる世界の夕闇と繋がる国。価値観が通じることすら稀なこの国で
確かなのは全て、「売る」と「買う」という信頼関係だけだったから
――現れたお客様は、ほのかに紅茶の香りがした――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が10上昇した
笑顔の訓練をしました笑顔が11上昇した
笑顔の訓練をしました笑顔が12上昇した
機転の訓練をしました機転が10上昇した
機転の訓練をしました機転が11上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
◆購入
パロットは竜爪おろし【赤・甘口】を528闇円で購入した!
パロットはオリ・ジンを528闇円で購入した!
パロットは缶ビールを528闇円で購入した!
◆作製
作成時発動! 意欲!! 意欲強化!
やる気ノート20と親切マニュアル20を素材にして鸚鵡印の日本酒を作製した!
◆コンビニタイプ決定
ビジネス に決定!!
◆アセンブル
スロット1に虚無飲食物を装備した
スロット2に虚無酒類を装備した
スロット3に虚無雑誌を装備した
スロット4に虚無書籍を装備した
スロット5に虚無高級品を装備した
スロット6に虚無日用品を装備した
スロット7に鸚鵡印の蒸留酒を装備した
スロット8に竜爪おろし【赤・甘口】を装備した
スロット9にオリ・ジンを装備した
スロット10に缶ビールを装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
ENo.74からのメッセージ>>
ヒュミール「あの……お酒ひとつください、おいしいやつ。おみやげに……わたしは飲めないから、お店の人のおすすめ、おしえてほしいです」
メッセージを送信しました
>>Eno.7 >>Eno.74 >>Eno.57

メッセージを送信しました
>>Eno.7 >>Eno.74 >>Eno.57
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 1914
貢献補正 0.4%
行動順報酬!! 19%
合計闇円収入2285
商品販売数 2個
◆経験値が17増加しました……
◆体力が11増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献補正 0.4%
行動順報酬!! 19%
合計闇円収入2285
商品販売数 2個
◆経験値が17増加しました……
◆体力が11増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
パロットはアルハラ24を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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陽気でうるさい幽霊。足はあるよ。 生前のことは何も覚えてないし、つい最近のこともほとんど覚えてない、かるーい頭をしている。 何だかよくわからないけど目が覚めたらコンビニで、しかもコンビニから出たら死ぬ(消える)と言われたので、とりあえずコンビニの中で好き勝手することにした。まずは酒を飲もう。ついでに売ろう。 【酒中心コンビニ『鸚鵡屋』従業員】 パロット こいつ。派手な幽霊。酒が好き。女も好きだけど巨乳に限る。とにかく記憶がふわふわしてて、生前のことはほとんど覚えてないし、死後のこともよく覚えてない。 超マイペースで口を開くとうるさい。とてもうるさい。うるさいからパロット(鸚鵡)なのかもしれない。 リブラ 謎の男。コンビニにパロットを押し込めた張本人だがその思惑は不明。イケメンだけどちょっと残念な空回り型生真面目さん。 パロットはコンビニから出たら死ぬので、ペンギンの姿で外回り宣伝してることをパロットはまだ知らない。 アイコン(ペンギン以外)提供:紙箱みど様 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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