第9週目 B・ミナスジェライス兄妹の一週間
◆日記
業務日誌
8日目
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
金魚坂グループとの契約終了が近づいている。今になって思うと随分とあっという間だったように思う。妹達は何だかんだ言ってここでの生活を楽しんでいて、契約の終了を素直に寂しがっていた。正直なところ、大変な事は多いがおれ自身ここでの生活にすっかり馴染んでしまっている。金魚坂グループが許してくれるのであればもう一度契約更新をしてもいいぐらいだ。
だが、おれ達は残像領域に『バーントイエロー』を残してきてしまっている。このまま何も言わずに戻らなければガレージの管理人に迷惑がかかるし、場合によっては『バーントイエロー』が解体されてしまうかもしれない。乗り手が戻らない機体をそのままにしておく者はいないだろう。そんな訳で、残像領域に戻らないわけにはいかないのだ。
夕闇国は気に入っているけれど、おれの中にはあの場所が自分の故郷だという認識が芽を吹きつつある。だからおれは残像領域に戻ろうと思うが、気にかかるのは妹達、ヴェラとアニカの事だ。あの霧と硝煙と霊が渦巻く世界へ、妹達を連れて行きたいと、おれはどうしても思えない。以前は三人でずっと行動していたのに、変な話だ。
このことについては、実のところ考えがある。もう少し内容を詰めてから、今ひとつ存在を信用できない『シトリン・マーケット』本部に連絡を入れてみるつもりだ。
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シトリン・マーケット臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライスはペンを置いた。開いていた業務日誌を閉じる。業務日誌は夕闇国に繋がる幾つかの世界において『大学ノート』と呼ばれるタイプの市販品だ。そっけない表紙にはリオの生真面目な「シトリン・マーケット業務日誌」という文字の周りに、愛らしい小花やハート柄や小鳥の模様が飛び交っていた。こちらはリオの妹達の手によるものだった。
リオはペンをペン立てに戻し、業務日誌をデスクの引き出しにしまった。尻尾型ケーブルを壁の充電スペースから引き抜き、大きく伸びをする。彼のいるモニター室は薄暗く、モニターは皓々と監視カメラの映像を映し続けているばかりだ。妹達は仮眠室に戻り、自動人形達はスリープモード中だった。この部屋にはリオ以外には誰もいない。目に映る者は誰も。
リオはぼんやりとモニター室の暗がりを見ていたが、やがて小さく息を吐き、デスク下から何かを取り出した。こっくりとした琥珀色の液体が詰まった酒瓶である。
「昨日、街で見つけた」
声に出して言いながら、リオは酒瓶をデスクの上に置く。硬質にカットされたクリスタルのグラスも取り出して、自分の目の前に置いた。
リオの正面、デスクの向こう側にも事務用椅子が置かれていた。リオが設置したものだが、そこには当然ながら誰もいない。リオのカメラアイも、耳の集音マイクも、何も捉えていない。
しかし彼の機械化された体の最奥部にある何かは、この部屋に自分以外の誰かがいるとしきりに囁いていた。
「あなたには、懐かしいんじゃないか」
語り続けながらリオは瓶のふたを開ける。
「これはあなたの故郷の酒に似ている。おれは記録の断片しか見ていないから、本当は大して似ていないかもしれないけれど……かつてのリオはあなたがその酒を好んで飲むのを見ていたようだ。そのデータも、劣化はしているがおれの中に残っていた」
瓶を傾けてグラスに中身を注いだ。とくとくとく、と小気味良い音を立てて、グラスに琥珀色の液体が満ちる。
リオの正面に置かれた椅子が軋んだ。先ほどよりも濃い気配がそこにある。
「酒は死者との媒介になると聞いた。その矢先にこれを見つけた。あなたが来てくれるんじゃないかと思って」
ここしばらく『シトリン・マーケット』に出没する亡霊について、リオは妹達と既に話を済ませていた。
「返事は、もらえるとは思っていない。あなたにも事情があるだろう、霊体だけの存在がメッセージを生者に伝えるのはとても大変だと聞いた」
おれは生きているとは言えないかもしれないが、という台詞は飲み込んだ。
「ただ一つ、言っておきたかったんだ」
目の前の闇を見る。姿は見えない。だが感じる。あの気配がそこにいる。
それを確認して、リオは口を開いた。
「カブリール、分かってはいるだろうけれど、おれ達は残念ながらあなたの息子や娘ではない。確かに顔は同じだし、元々は彼らだった。でも今は、もう違うものになってしまっている」
話しながらも、それが欺瞞を含んでいる事をリオは意識せずにはいられない。リオ達は生前とは大きく変わってしまっている。
しかし彼ら兄妹がまた「個人」として生きられるよう、管理用AIとしてウォーハイドラ『バーントイエロー』と一体化していた三人の魂を分割し、それぞれの肉体へ再度付与した、いわば残像領域へ再誕させたのは紛れもなく目の前の亡霊、カブリールだ。その際に自身を生贄にして。
だから今のリオ達も、どうしても彼が「父」であるという認識が拭えない。顔も見た事のない父。
しかし、そう思うからこそリオは言わなければならない。
「もう、いいんだ。あなたはあなたの責を果たした」
一息ついて、続ける。
「おれ達は、あなたを恨んでなんかいない」
キン、と、グラスが澄んだ音を立てた。
「生きていた頃のおれ達だって……少なくともリオは、そうだった。最後まであなたの心配をしていた。この体の生身の部分に残ったデータからの類推だけれど。ヴェラとアニカも、あなたを恨んでいたとは思えない」
その件についても、リオは今の妹達に確認している。
「だから、あなたが今もおれ達に縛られてここにいると言うのなら、それはおれ達の本意じゃない。……そのことだけは、伝えたかったんだ」
リオは一度目を伏せ、そしてゆっくりと開けた。
グラスを持つ、ぼんやりと薄く白い影。その影をひどく懐かしく思うのは今のリオなのか、それともかつてこの体の主だったはずの人間のリオなのか。
「でも」
自分の声が震えているのが分かる。しかし、抑えられない。
「……見に来てくれていると分かって、嬉しかった。ありがとう」
耐えられなくなって目を閉じる。瞼の裏ではリオの心拍数が上がっている様子がモニタリングされていた。
どうしてだろう。リオは思う。おれはカブリールの息子のなれの果てでしかないのに、どうして、こんなにも。
その時、ふ、と、リオの頭に暖かなものが触れた。
「……!」
急いで見開いた彼の視界に、もうあの気配はなかった。
グラスの酒は、少しだけ減っていた。
8日目
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
金魚坂グループとの契約終了が近づいている。今になって思うと随分とあっという間だったように思う。妹達は何だかんだ言ってここでの生活を楽しんでいて、契約の終了を素直に寂しがっていた。正直なところ、大変な事は多いがおれ自身ここでの生活にすっかり馴染んでしまっている。金魚坂グループが許してくれるのであればもう一度契約更新をしてもいいぐらいだ。
だが、おれ達は残像領域に『バーントイエロー』を残してきてしまっている。このまま何も言わずに戻らなければガレージの管理人に迷惑がかかるし、場合によっては『バーントイエロー』が解体されてしまうかもしれない。乗り手が戻らない機体をそのままにしておく者はいないだろう。そんな訳で、残像領域に戻らないわけにはいかないのだ。
夕闇国は気に入っているけれど、おれの中にはあの場所が自分の故郷だという認識が芽を吹きつつある。だからおれは残像領域に戻ろうと思うが、気にかかるのは妹達、ヴェラとアニカの事だ。あの霧と硝煙と霊が渦巻く世界へ、妹達を連れて行きたいと、おれはどうしても思えない。以前は三人でずっと行動していたのに、変な話だ。
このことについては、実のところ考えがある。もう少し内容を詰めてから、今ひとつ存在を信用できない『シトリン・マーケット』本部に連絡を入れてみるつもりだ。
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シトリン・マーケット臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライスはペンを置いた。開いていた業務日誌を閉じる。業務日誌は夕闇国に繋がる幾つかの世界において『大学ノート』と呼ばれるタイプの市販品だ。そっけない表紙にはリオの生真面目な「シトリン・マーケット業務日誌」という文字の周りに、愛らしい小花やハート柄や小鳥の模様が飛び交っていた。こちらはリオの妹達の手によるものだった。
リオはペンをペン立てに戻し、業務日誌をデスクの引き出しにしまった。尻尾型ケーブルを壁の充電スペースから引き抜き、大きく伸びをする。彼のいるモニター室は薄暗く、モニターは皓々と監視カメラの映像を映し続けているばかりだ。妹達は仮眠室に戻り、自動人形達はスリープモード中だった。この部屋にはリオ以外には誰もいない。目に映る者は誰も。
リオはぼんやりとモニター室の暗がりを見ていたが、やがて小さく息を吐き、デスク下から何かを取り出した。こっくりとした琥珀色の液体が詰まった酒瓶である。
「昨日、街で見つけた」
声に出して言いながら、リオは酒瓶をデスクの上に置く。硬質にカットされたクリスタルのグラスも取り出して、自分の目の前に置いた。
リオの正面、デスクの向こう側にも事務用椅子が置かれていた。リオが設置したものだが、そこには当然ながら誰もいない。リオのカメラアイも、耳の集音マイクも、何も捉えていない。
しかし彼の機械化された体の最奥部にある何かは、この部屋に自分以外の誰かがいるとしきりに囁いていた。
「あなたには、懐かしいんじゃないか」
語り続けながらリオは瓶のふたを開ける。
「これはあなたの故郷の酒に似ている。おれは記録の断片しか見ていないから、本当は大して似ていないかもしれないけれど……かつてのリオはあなたがその酒を好んで飲むのを見ていたようだ。そのデータも、劣化はしているがおれの中に残っていた」
瓶を傾けてグラスに中身を注いだ。とくとくとく、と小気味良い音を立てて、グラスに琥珀色の液体が満ちる。
リオの正面に置かれた椅子が軋んだ。先ほどよりも濃い気配がそこにある。
「酒は死者との媒介になると聞いた。その矢先にこれを見つけた。あなたが来てくれるんじゃないかと思って」
ここしばらく『シトリン・マーケット』に出没する亡霊について、リオは妹達と既に話を済ませていた。
「返事は、もらえるとは思っていない。あなたにも事情があるだろう、霊体だけの存在がメッセージを生者に伝えるのはとても大変だと聞いた」
おれは生きているとは言えないかもしれないが、という台詞は飲み込んだ。
「ただ一つ、言っておきたかったんだ」
目の前の闇を見る。姿は見えない。だが感じる。あの気配がそこにいる。
それを確認して、リオは口を開いた。
「カブリール、分かってはいるだろうけれど、おれ達は残念ながらあなたの息子や娘ではない。確かに顔は同じだし、元々は彼らだった。でも今は、もう違うものになってしまっている」
話しながらも、それが欺瞞を含んでいる事をリオは意識せずにはいられない。リオ達は生前とは大きく変わってしまっている。
しかし彼ら兄妹がまた「個人」として生きられるよう、管理用AIとしてウォーハイドラ『バーントイエロー』と一体化していた三人の魂を分割し、それぞれの肉体へ再度付与した、いわば残像領域へ再誕させたのは紛れもなく目の前の亡霊、カブリールだ。その際に自身を生贄にして。
だから今のリオ達も、どうしても彼が「父」であるという認識が拭えない。顔も見た事のない父。
しかし、そう思うからこそリオは言わなければならない。
「もう、いいんだ。あなたはあなたの責を果たした」
一息ついて、続ける。
「おれ達は、あなたを恨んでなんかいない」
キン、と、グラスが澄んだ音を立てた。
「生きていた頃のおれ達だって……少なくともリオは、そうだった。最後まであなたの心配をしていた。この体の生身の部分に残ったデータからの類推だけれど。ヴェラとアニカも、あなたを恨んでいたとは思えない」
その件についても、リオは今の妹達に確認している。
「だから、あなたが今もおれ達に縛られてここにいると言うのなら、それはおれ達の本意じゃない。……そのことだけは、伝えたかったんだ」
リオは一度目を伏せ、そしてゆっくりと開けた。
グラスを持つ、ぼんやりと薄く白い影。その影をひどく懐かしく思うのは今のリオなのか、それともかつてこの体の主だったはずの人間のリオなのか。
「でも」
自分の声が震えているのが分かる。しかし、抑えられない。
「……見に来てくれていると分かって、嬉しかった。ありがとう」
耐えられなくなって目を閉じる。瞼の裏ではリオの心拍数が上がっている様子がモニタリングされていた。
どうしてだろう。リオは思う。おれはカブリールの息子のなれの果てでしかないのに、どうして、こんなにも。
その時、ふ、と、リオの頭に暖かなものが触れた。
「……!」
急いで見開いた彼の視界に、もうあの気配はなかった。
グラスの酒は、少しだけ減っていた。
STORY
ついに自らも金魚となってしまったさなえ金魚坂グループは終わりに思えた……そのとき!
「ごぼぼっ、ごぼぼぼっ!?」
さなえは素敵なものを目にする。炎を帯びたオリハルコンの接客マシンだ
「ハッチュウシマス……ノウヒンシマス……」
なんと金魚型接客マシンたちが、店の業務を始めたのだ!流石オリハルコン製といったところだ
(ああ……大丈夫なんだ……みんな、全部を任せて……金魚の知恵で……何も考えずに金魚鉢で……)
しかし、さなえの心に燃え上がるのは別の感情!
「ごぼぼっ、そんなわけあるか……わたしは、わたしの全てを、わたしの手でやり遂げる!」
さなえの……人間の手が接客マシンの腕を掴んだ
「……貸してみなさい。本気の経営ってやつを、見せてあげるよ」
そのころ、金魚坂本社の地下、金庫の鍵がみしりと軋んだ音を立てた……
――さあ、決算を始めよう――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が24上昇した
機転の訓練をしました機転が21上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
イエローズはプリンバーガーを破棄した!
イエローズは〈SMILE〉を破棄した!
イエローズはポトフを破棄した!
◆購入
イエローズはあんず大福NEOを624闇円で購入した!
イエローズは目が合う弁当を624闇円で購入した!
◆作製
CM放送48と大量消費社会48を素材にして号外!金魚型オートマタの全てを作製した!
◆コンビニタイプ決定
ホワイト に決定!!
◆アセンブル
スロット1に目が合う弁当を装備した
スロット2にシルバーバナナを装備した
スロット3にあんず大福NEOを装備した
スロット4に魔王印のあつあつ肉まんを装備した
スロット5にえながまんを装備した
スロット6に敗者にならない技術vol.1を装備した
スロット7に号外!金魚型オートマタの全てを装備した
スロット8に紫水晶の首飾りを装備した
スロット9に深淵からの呼び声を装備した
スロット10に投稿!怖い話vol.6『魔除けのススメ』を装備した
スロット11にあんずタルトを装備した
スロット12に古びた懐中時計(機械式・手巻き型)を装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 3355
貢献収入 503
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 16%
合計闇円収入4698
◆経験値が50増加しました……
◆体力が94増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献収入 503
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 16%
合計闇円収入4698
◆経験値が50増加しました……
◆体力が94増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
イエローズは大量消費社会52を入手した!
イエローズはくやしさのばね52を入手した!
イエローズははえぬき52を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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どこぞの霧深い世界からやってきた、サイボーグの三人兄妹。 サイボーグなので、腰から尻尾のような充電ケーブルが生えている。 生活費を稼ぐべくとあるバイト募集のチラシを手に取ったところ、 夕闇国でコンビニの店長をする羽目になってしまった。 兄:リオ・B・ミナスジェライス 青年型サイボーグ。外見年齢は十代後半ぐらい。 三兄妹で一番感情表現が下手くそ。最近やっと笑顔が作れるようになってきた。根は素直。 最年長ということでコンビニ「シトリン・マーケット」の店長を押し付けられた苦労人。 勤務日記も彼が書いている。兄の性か。 妹その一:ヴェラ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ロングヘアーの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その一。アニカとは双子。いつも穏やかに笑っているおっとりさん。 勤務中に歌い出してしまうのが玉に瑕。 妹その二:アニカ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ツインテールの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その二。ヴェラとは双子。よく笑いよく走るおてんばさん。 勤務中に踊りだしてしまうのが玉に瑕。 コンビニ「シトリン・マーケット」 リオ達が経営を任せられた小さなコンビニ。 天井からは黄水晶(紫水晶を加熱して作った人工モノ)のドロップが装飾として いくつもいくつも吊り下がり、看板はけばけばしい黄金色をしている。 外には異世界の魔王から委託されたという多肉植物の無人販売所が併設されている。 最近店舗に幽霊が出るらしい。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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