ENo.0048　ハンナ・ザッカーカンデル

例え話は、昔から嫌いだった。
例えば、誰かが死なない世界が来たとしたら。
例えば、誰もが喜びの中で暮らせるようになったら。

そのどれもが、あたしにとっては嘘でしかなく、下らないものだ。
何せ、そんな例え話なんてあくまで空想の産物だ。
人間は、魔女と違って空想の中で生きていくことなんて出来やしない。
あたしは、人間だから。どうしようもなく、現実で足掻くことしかできない。

そんな下らない空想よりも、ずっとずっと下らないのが、この夕闇国のコンビニ戦争だ。
上司は金魚だし、客に理性なんて欠片もない。
でも、唯一この戦争が素晴らしいものだというのならば、優しい空想に耽ることができる一点のみ。

でも、あたしは知っている。
――全ての世界には、終わりがあるということを。

それに、大人は誰だって嘘つきで、掛かってきた電話の主だってそう。
誰も迷える仔羊なんかじゃなくって、迷っているのはあたし一人だけだということ。

大人になんて、あたしは一生なれないかもしれない。
来週も、また来週も。この優しい戦争が続いてくれることを祈って。